いつもA氏に負けているB氏は、実力では負けていないと思っていた。しかし、ファッションが問題なのだ。
そのとき、店にS伯爵が来ていると声が上がった。S伯爵と言えば、衣類のコーディネートのスペシャリストだ。自分で選んだ服ならダメでも、S伯爵ならベストの選択を選んでくれるはずだ。しかし、B氏もにも無限の財力があるわけではない。身分相応の店でしか買い物はできないのだ。
B氏はS伯爵に恩を売り込むことをに成功した。
「お礼に何でもしてあげよう」
そこでB氏は自分に入れる最高の衣料品店にS伯爵を連れて行った。
「それでどうすればいいの?」
「ベストを選んでください」
彼はハンガーからチョッキを選んで取り出した。
(遠野秋彦・作 ©2012 TOHNO, Akihiko)